壁新聞“西別府の心”№6
10月に入っても真夏日更新というニュースに,いったい日本はどうなっているのかと心配になってきます。そこへ今度は台風26号接近。なんだか落ち着かないこの頃です。
私は、ただ今季節外れの夏季休暇に入っています。それでも少しゆっくり休める事には大変感謝しています。朝寝坊、夜更かし、昼間にごろごろ、なんて優雅な事でしょうか。英気を養ってまた頑張るぞ-って思える事が大切なのですね。
今日は一冊の本を紹介し、今の社会の現状を考えてみたいと思います。(少し大げさかもしれませんが・・)
『ルポ産ませない社会』河出書房新書 小林美希著
「子どもは周囲から「おめでとう」と言ってもらって生まれてくる存在ではなかったか。今、そのムードは失われつつある。正社員・非正規社員を問わず、「妊娠解雇」「職場流産」が横行する現実の中で,妊産婦は職場でも社会でも孤立している。女性だけの問題ではない。」と本の表紙裏に書かれた文章は大きな衝撃を与えます。
医療職場ではこの50年の間に、女性の働き続ける権利を勝ち取るために若き母親達が立ち上がった保育所運動。育児休暇制度、時短制度、夜勤免除申請など多くの制度が出来ました。
今までは辞職する事が前提であった子育ても今は、働き続ける事が前提へと変わってきました。これは大変大きな進歩で有り、誇れる成果でもあるのです。
しかし、今また職場の環境は変わっていこうとしています。働き続ける事を選択するのであれば、ある程度の我慢と犠牲を払う必要があると言い始めているのです。大企業に就職しても、権利の主張はわがままと切られ、妊娠する事で他の人の負担が増大し迷惑になるとばかりに言葉の暴力。妊娠しましたという報告に「おめでとう」という言葉は陰に隠れ、ため息混じりの返事のみ。少子化少子化と言う言葉とは裏腹にいったい何が起こっているのでしょうか。
それでも一般の会社に比べれば、子育てしやすい環境にあると言われている医療職場。
しかし、24時間保育、365日休まぬ保育をうたい文句に看護師や医師を集める医療施設が、果たして子育て支援に進んだ環境であると言えるのかどうかは大きな疑問です。
誰かの犠牲の上に成り立つ職場、それが大きな声で不服の言えない子ども達にかかってきているとすれば、社会の基本である家族にかかってきているとすれば、今一度私達は考える必要があるのではないでしょうか。
この本のあとがきに「問題は山積みだが、現実を重く受け止め、共感,心配し、周囲にいる子どもを望む男女、妊娠中、子育て中の男女に暖かなまなざしを向けるだけでも、救われる親子は多いのではないか。
最終的には、一人ひとりの意識の変化が社会を変えていくと信じている。」と結んでいます。
自分達の雇用環境だけでなく、社会全体を見る目を持つことも必要です。それは医療職場で働く選択をした私達にはとても大切の事ではないでしょうか。相手の立場に立った医療の提供をめざしていく上からも。